0.6度の戦い

なんにせよ事実を知るのが怖い臆病者だから、ギリギリまで「そんなはずはない」と言い聞かせました。けれど、おかしいのは朝から。夕方、買い物に出かけたときには体の中で何かが微かに、けれど確実に波紋を立てていたのを自覚したのです。
いよいよ仕方なく、寝る間際になって体温計を脇の下に挟みました。ピピッと鳴って出た数値は、37.2度。これは微熱に属するのだろうと思うわけです。だから大したことはない。咳や鼻水が出るでもないし。しかし元より熱が出ない性質で、コロナ禍ですら体温計を使った記憶がなく、だから何年振りかの発熱の事実を叩きつけられて、それ相応に落ち込みました。無駄な抵抗などせず昼間のうちに対処をしておけばよかったかもしれない、という後悔とともに。
平常心を保とうと飲んだビールもまるで美味しくない。いずれにせよ平熱を上回っている現状に直面して、降参することにしました。早く横になって休むしかない。他に適切な対応策を知らないし。
そうして目を瞑ってみるのだけど、結果的に1時間半おきに目が覚めてしまいました。初期段階では、誰かの声が聞こえたのです。
「昼間ずっと仕事してたでしょ。それで知恵熱が出たんだね」
その言葉に救われた気がしました。でも、よく考えてみれば、聞き覚えのある誰かの声を使って自己暗示をかけたかっただけなのだろうと。こういうのをうなされていると言うんだろうと。
次は悪寒で覚醒しました。体中、鞭がしなるみたいな波動に襲われて、こりゃついにヤバいかもと。その後は大量の寝汗。最終的に3枚のTシャツを洗濯機へ放り込みました。
午前中に仕事があったので、熟睡感がないまま所定の時間に起きてみたら、何が抜けた実感がありました。そうなると、体温計で現状を知りたくなるのは現金という他にありません。
36.6度。たぶん平熱。妙に感心したのは、僕の体は夜の間に、こう言っちゃ何だけど頼みもしないのに、0.6度の体温低下を目指して戦ってくれたことでした。ありがたいです。よくできているもんですね。
それにしても、原因がわからない。感染症とはそういうものだろうから、大人しくしているのが正解なのでしょう。知恵熱? 確かに、ややこして文字量の多い原稿と対峙してはいたけれど……。

いつ買ったか覚えてないけれど、いてくれてありがとう。良きデザイン。

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