耳にパンツを

何の前触れもなく身体的特徴を指摘されて、最初に感じたのは羞恥でした。部位によるのかもしれませんが。
「耳、デカくないですか?」
発言の主は、数年の付き合いがある20代後半の制作会社の女性。あるイベント取材の合間でした。その瞬間まで堅めの話をしていたんです。イベント自体の開催経緯と今後。はたまた業界の景気動向など。そんな会話の中身に沿った真面目な表情を浮かべていた彼女が、ふと顔色を変えないまま視線だけ逸らせ、明瞭な声で件の言葉を発したのです。
目に飛び込んだものをすぐに言語化できるのが女性脳の特性と聞いたことがあります。だから彼女は注意散漫ではなく、自分の脳に従った言動を見せただけなのでしょう。しかし突然「耳、デカ」と言われた僕は、訳もわからず恥ずかしくなりました。たぶんとっさに手で耳を隠したんじゃないかな。
自分の耳が大きいなんて、生まれてから今日まで一度も思ったことがありませんでした。それが羞恥の源なのでしょう。辱められた気持ちになったので、反撃のつもりで「じゃ、自分の耳を見せてみろ」と彼女に言ってみたら、やっぱり恥ずかしそうだったんですよね。これはギリアウトのセクハラなんだろうな。
いずれにしても、何気ない彼女の発言が気になって仕方なくなりました。そこで調査。僕が出くわした資料によると、日本人の成人男性の平均的な耳は、タテ幅6.31cm/ヨコ幅3.2cm。同じく女性のそれは5.91cm/2.99cm。数値がわかれば測ってみたくなりますよね。僕の耳は次の通りでした。8㎝/4㎝。まさか平均値越えとは? 彼女が目を奪われるのもやむを得ないほど、僕の耳はデカいみたいです。
別の資料によると、眉間から鼻の頭の長さより耳のタテ幅が長いと、大きな耳となるそうな。これも測ってみたら、眉間から鼻の頭までが7㎝だったので、やっぱりそういうことらしい。
この類を検索すると、大きさや形状による性格判断がたくさん出てきます。それよりも僕の耳目を集めたのは、「加齢で軟骨が薄くなると皮膚を支える力が弱まり、結果的に耳が大きくなる」という一文でした。耳の平均サイズのデータでも、男女問わず高齢になるとタテ幅で0.5~0.7㎝。ヨコ幅で0.1~0.2㎝ほど大きくなる(垂れ下がる?)事実が示されていました。
うわうわ、またしてもオチが加齢ですよ。生まれて初めて耳が大きいと指摘されたのは、僕が歳を喰ったからなのかな。そんなこと、知りたくもなかった。
「この仕事には向いているんじゃないですか? 耳が大きければいろいろ聞けるから」
これも彼女の、やはり悪意も責任もないセリフ。そうなのだろうか。加齢を軸に考えると、低下する聴力を補うために耳が大きくなるような気もしてくる。まぁ、でも、なぜかとても恥ずかしかったです。すぐさま耳にパンツを履かせたくなるほどに。

朝から溶接バチバチ。腰が辛そうだな。

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