お金のこと、中でも報酬に関する話題は、同業者間でもおよそタブー扱いです。けれどそんな話を聞いてしまったら、いろんな意味合いで「やめてくれぇ」と叫びたくなりました。
桁が違うそうです。詳しく説明していいのかわからないけれど、ある親しいクライアントが教えてくれました。
その会社には、長期のプロジェクトAと、始まったばかりのプロジェクトBがあるそうです。この話をしてくれた人が担当しているのはプロジェクトA。対するプロジェクトBは、数多くの若手が参加するものらしいんですね。
そのAとBの外部に支払う報酬が桁違いなんだそうな。違うと言っても一桁。にごし気味に例を挙げれば100円と10円の関係性。そうであっても、見る人によっては困った反応をされるというのです。
「支払明細の一覧にはBの報酬がバァ~と並んでいて、その中にAの報酬がポツンとあると、経理担当は目をつけ始めるわけですよ。だから桁が違う理由をちゃんと説明しておかないと、癒着していませんかとか、あるいは安いほうに統一してくださいと言われかねない」
癒着って……。会社というのはそういう観点を持つんですね。キックバックの要求とかに疑念を持つのでしょうか。そういう噂話を聞いたことがあるけれど、それで関係性が維持できているという話は聞いていないんだけどな。
何より怖いのは、安いほうへの統一です。その額じゃないと実行できないのかもしれないし、その額でも若手は受けるのかもしれない。そうであっても……。プロジェクトAの担当者が言葉を続けました。
「雇用するというのは、その人の幸福を考えることだと思うんですよね」
そもそも自分一人で稼げる額には限界があるし、それぞれの事情に鑑みた報酬で承るのも常。じゃ何が楽しくてフリーの外部事業者をやっているかと言えば、自分の持ち得る微かな才能と興味の発露が、誰かの役に立つよろこびを知ったからです。そして何よりも、こういう自分を認めてくれるクライアントがいてくれることに幸福を感じるから。
そんなこんなで、人様の報酬まで気にしていられる立場ではなく、業界の仕組を変える力など持っているはずもないフリーランサーの僕ですが、若手の同業者に何か言えるとしたら、僕らを守ってくれる志の高いクライアントに出会える運を身に着け、期待に応え続けて縁を絶やさないよう頑張って、という他にない感じです。アドバイスになってないか。いや、僕にもアドバイスをください。

誰もが何の不安も感じず日々歩けるトンネルをつくるのって、なんか凄いなあと思って。
