夢の中までも追いかけてくる

出たんです、ヤモリが。部屋のドアを開けた先の壁に。昨年の夏くらいから、それとなく気配は感じていました。でも、見間違いと自分に言い聞かせて、いないものと思い込んできたのに。
恐怖が実態のイメージを膨らませるのかもしれないけれど、かなりデカかった。尻尾まで含めると20センチくらい。僕の知っているヤモリのサイズとはかけ離れているから、あれは別の生物なんだろうか。しかし、僕の目線より少し上の垂直の壁に張り付いていたんですよね。そんな芸当ができるのはヤモリ以外にいないと思うのですが、どうでしょう。
まったくもって苦手なのです。ニョロリとかニュラリした爬虫類や両生類が。いや、噂では聞いているんですよ。ヤモリは人間に害を与えず、害虫を食すことから家守の別名も持つ生き物であることは。そしてまた爬虫類好きがペットにしていることも。
なおかつ、こんなことも思うのです。この緑が少ない住宅街のどこかで卵の殻を割り、親の助けも借りず小さな身で必死に育った上で、僕が住むマンションの5階まで上がってきた、タフで健気な生き様は尊敬の念に値すると。
そうであっても僕にはしんどい。前の部屋を引っ越したのは、やなり夏の夜になると壁伝いで現れるヤモリから逃げたかったところもあるんですよね。なのにこっちの住まいでも出た。ゾワゾワします。とは言え、退治とか駆除は考えていません。だからせめて夜間に部屋を出入りするときだけは、僕の視界に入らないでくれればいい。
そんな願いを抱きなが眠りについたら、またしても出たんです。今度は夢の中に。部屋の中への侵入だけは阻止したいと思ったからか、脳がつくったおぼろげな映像では風呂のドアに張り付いていました。それもまたデカいんだけど、遊泳中のイグアナみたいに、手足を体の側面に添えた頼りない姿だったのは、いかにも曖昧な夢の所業かもしれません。
何なんでしょう。彼らには、嫌だと思っている僕の気配に興味を覚える器官が備わっていて、だから夢の中まで追いかけることができるのかな。
そんなこんなで最近は、夜間に家のドアを開ける際は、ちょっと物音を立てて注意を促すようにしています。あとは、ヤモリの姿を見ないようドアとエレベーター間の廊下をうつむいて歩くとか。そんな弱気な様子にも反応するのでしょうか。とにかく、彼らの行動が制限されるほどの寒い日が一日も早く訪れることを祈るばかりです。うぅ、これを書いているだけでゾワゾワする。

何だかそれとなくちょっとだけ、秋の空になった気がする。

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