たとえば、勇気と覚悟を持って手にした、分厚く重い小説の残りページが目に見えて少なくなったときの感覚に近いかもしれません。
朝ドラ『虎に翼』が最終週を迎えました。タイトルに選ばれた「虎に翼」は、元より強い力を持つ者にさらなる強い力が加わることを示す諺で、類語は「鬼に金棒」らしいです。そうであれば、寅子という名の主人公が物語の終わりにどんな翼を手に入れるのか、あるいは手に入れられないのか、そこはきっちり見せてもらわなければならない!
などと語気荒めで期待していいのは、1話15分×130話=32.5時間を朝ドラに費やした視聴者ならではの権利だと思うのです。まぁ、好きで見てきたんだから、権利とか偉そうなことを口にするのもイヤらしい話ですね。けれど、相応の達成感を得たいというのは本音です。
一方、これまた録画までして視聴し続けた、メジャーリーグというより大谷翔平選手の通常シーズンも、本日早朝時点で残り6試合になりました。ぶっちぎりの地区優勝間違いなしと言われた大谷選手が所属するドジャースは、ここに至っても優勝を決められていません。そんなヒリヒリする最終盤戦となったので、あるいは今日からの数試合を見ただけでも、メジャーリーグの醍醐味が味わえるかもしれません。
いやいやしかし、なのですよ。大谷選手の異常とも言える活躍は、情報番組やスポーツニュースに留まらず、一般のニュースでも取り上げられるけれど、大谷選手自身や所属チームには不調や弱点を晒す時期がありました。それも見届けてきた僕らだからこそ、ここに至って本当のヒリヒリを味わえる!
そんな特権を感じてしまうのは、分厚く重い小説の重厚感に耐えたからに他なりません。長い物語は、つくるほうも付き合うほうも相当にタフでなければならないわけです。
などと勝手にエキサイトしても、この世界には朝ドラやメジャーリーグに興味を持たない人がたくさんいるでしょう。時間の使い方において、どちらが賢いのかわかりません。けれど物語に触れてしまった者は、そういう損得勘定などお構いなしで、薄くなった残りページを繰るのです。間もなく訪れる予定通りの別れの哀しみすら愛しむように……。

お寺の森がすぐ目の前の午後6時。
