余所者・若者・馬鹿者

「余所者・若者・馬鹿者」という言葉を初めて耳にしたのは、10年くらい前だったと思います。僕より20歳くら若い人が、「その3つが地方創生や地域おこしの事業を推進させるキーワードなんですよ」と教えてくれました。
彼によると、その土地に長く住んでいる人は、自分たちの町の長所または欠点に気づけないというんですね。そういうものだと疑わずに暮らしてきたから。それゆえ、地域の未来が危ぶまれる問題に迫られたとき、自ら解決法を絞り出せないそうです。そんな人々の支えになるのが、土地に縁のない余所者で、行動力のある若者で、常識や伝統を知らない馬鹿者なのだと。
そんな3つの要素を兼ね備えた者がやってくれば、少なくとも最初は騒ぎになるはず。「あんな連中に好き勝手されていいのかよ、漁労長?」みたいな感じで。それが予想できる上で、どうやって地方創生を成功させるのか件の彼に聞いたら、こう答えました。
「足?く通うか、あるいは拠点を現地に移したりして、時間をかけて理解してもらう他に手立てはありません」
そうして信用を勝ち取っていけば、やがて余所者でも若者でも馬鹿者でもなく、みんなに愛される者になっていくのかもしれません。それを証明した別の例が、日本人のメジャーリーガーです。
最初はイチローさん。シアトル・マリナーズに移籍したメジャー1年目に、打率357で首位打者と、盗塁56で盗塁王。守備でもレーザービームと呼ばれた外野からの好返球が注目され、新人王はもちろんシーズンMVPなど数多くのタイトルと賞を獲りました。
それって、メジャーリーグにすれば余所者に掻き回されたってことなんですよね。そのおかげで野球ファンは目が覚めたらしいのです。イチローさんの打って守って走るという「余所者・若者・馬鹿者」そのままの活躍は、野球の原点そのものだったと。
次は、口にするのもおこがましい大谷翔平選手。投手と打者の二刀流は、国や地域を超えた常識破りなので、いったん他所に置くとして、今年で特筆すべきは、やはり盗塁の多さです。ホームラン王を争うことに疑いの余地はなかった。けれどイチローさんを抜くほどの盗塁数を稼げるとまでは誰も予想できなかったはず。その清々しい裏切りによって、今後のメジャーではさらに盗塁が注目されていくんじゃないでしょうか。
などと評論家気取りで喋っていますが、固定された価値が崩壊していく場面に触れて、10年前に教わった三つの要素をしみじみ思い出しているところです。まぁ、イチローさんや大谷選手はとんでもない人たちだけど、それでも1年を通して活躍しないと理解と納得が得られない点だけは、もはや若者ではない僕でも学べるなあと思ったりします。

『ザ・ベストテン』みたいとつぶやくのは、言い逃れできない世代の業です。

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