土産考

たとえば、土産。もし僕が日本語を学ぼうとする外国人だったら、この漢字二文字と対面した瞬間にすべてを投げ出すでしょう。
土も産も、音読みなら【ど】と【さん】で、そのまま【どさん】と発音したら【土地の産物】という意味がある。なのに現在一般的には【みやげ】と読むなんて、統一ルールのない試合じゃ戦う前に気力が失せます。ちなみに、語源は例によって諸説あり。日本語の風情ってことで目をつむっておけばいいのかな。
さておき先日の京都。同行のフォトグラファーは、指定された集合時間より早く京都駅に着いていたそうな。理由は、「先にお土産を探しておこうと思って」。僕の定義では、帰りに探すのがお土産。そういうもんじゃないの? とたずねたら、「ウチの子供たちはアレルギー体質なので、グルテンフリーじゃないとダメなんですよ。お土産って、たいがい小麦を使っているじゃないですか。そうじゃないものを探すのに時間がかかるんです」
じゃ、買わなきゃいいじゃん、などと性悪なことは言いません。それぞれ事情があります。
これは別の人から聞いた話。女性同士で近くの外国まで旅行した際、相方は往きの空港の免税店でブランドバッグを買ったそうな。免税店であれば、高額商品ほどお得な買い物ができるのだろうけど、往きで買ったら旅の間中ずっと荷物になるんじゃないでしょうか。
ならないんでしょうね、その旅でそこで買うことは計画されていたはずだから。それにそのバッグは、土産ではなく自分へのご褒美なのでしょう。となれば、いつもと違う場所で買うもの。そして他者に贈るためではないものは、必ずしも土産に該当しないのかもしれません。そうして僕の定義は跡形もなく崩れ落ちていく……。
それが残念でもないのは、僕にお土産への執着がないから。はるか以前から、他者にも自分にも土産を買い求める習慣を持っていません。「お印だから、何でもいいんだよ」という説もありますが、何でもいいものを判断する能力が僕にはない。土産話ならできるんですけれど、それがよろこばれたケースも少ないので、僕はこのまま土産と距離を置いたたま生きていくでしょう。土産を【みやげ】と読むいい加減さより、ずっと潔いはず。
全国の土産物屋さんを敵に回す話しでした。皆さんは、今日もよいお土産探しを。

素敵な土産に満ち溢れているに違いない町。

 

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