一度ならず

「勝ちましたねぇ、ドジャース」
このセリフをここで最初に記したのは10月23日。その2日前の21日は、ドジャース対メッツのリーグ優勝決定戦第6戦がテレビ中継されたものの、取材だった僕は録画を残して朝から出かけたわけです。可能な限りの情報遮断を心掛けながら。なのに向かった先の京都で、取材対象者に件の結果をつぶやかれた。それは間違いなく、こちらの事情を知る由もない相手の、時候の挨拶みたいなものだったけれど。
誰が言ったかバラしちゃえ。長く追っかけ連載をやっている宮里優作くんです。プロゴルファーが野球の話をすんなよぉってツッコみました。いやまぁ、彼はスポーツ全般が好きだし、その日も途中までドジャース戦を観ていたらしいので致し方ありません。そもそも帰宅するまで、話題の試合結果に触れないでいるのが不可能なのだし。
そんな珍事をすっかり忘れていた昨日、再び災難に遭いました。今度は、よく話す社長さん。ご存じの通り、ドジャース対ヤンキースのワールドシリーズ第5戦。そのときは午後1時からお話する予定だったので、それまでは緊張感をもって試合に食い入ろうと。もし午後1時までに試合が終わらなかったら、続きはお話し後に録画で確認しようと。そして試合が大詰めを迎えたところで予定の時間に。そうして最初にかけられた言葉が、優作くんがつぶやいた文言と一字一句同じでした。その社長さんは、野球よりサッカーが好きなのに……。
こういう場合、「そうなんですね」程度の軽い返しが妥当とわかっています。スポーツの結果に一喜一憂する素振りを仕事の場に持ち込むなんて、大人としてあるまじき作法だし。なのに僕は、傷口に塩を塗り込まれたような気持ちになったんでしょう。「いやそれは、これから録画で……」と、喉を締められたようなかすれ声でボヤいてしまいました。「あぁ、ごめんなさい」って、その業界では仕事ぶりが注目される有名な社長さんに謝らせるなんて、オレはどうしたかったんだ?
以上の話には何の教訓もありません。ただ、一度ならず二度までもという慣用句の信憑性を体験的に学習して、来年の今頃も同じことで苦しむのかもしれないと思っただけです。11月の始まりに、そんな呑気なネタを披露したかったわけじゃないんだけどな。

撮るとき頭の中で鳴ったのは、童謡の『もみじ』。子供の頃は「てるやま」の意味が不明だった。

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