革新的な技術の進化も、行き過ぎると絶滅に追いやられる。特に公平を期したい競技の世界では、そうした変遷が繰り返されるようです。
たとえば、2008年の北京オリンピック前後で話題になった高速水着。スピードというブランドの、レーザーレーサーだっけ。全身を覆いつくすワンピース構造で、それを着るだけで記録が伸びるとされた代物でした。しかし、ほどなくして禁止の対象になったんですよね。ほぼ裸一貫の肉体勝負である競泳の原点に立ち返るというのが主な理由。それから、持たざる者の不利を見逃せなかったところもあったでしょう。それが納得できるから、これは仕方ないことなんだと諦める他にないと思うんです。
高速水着ほど世間の注目を集めない狭い領域の話で恐縮ですが、軟式球を使う少年野球や大人の草野球界で、高反発素材を採用したバッドの使用禁止が進んでいます。僕が知り得る理由のひとつは、打球の飛距離が著しいから。河川敷や公園内の球場は、歩道や別の施設との距離が近いため、球が飛び過ぎると事故の原因になる。それはごもっとも。楽しい野球で誰かを傷つけるなんて、あっていいことではありません。そしてまた、持たざる者への配慮もあるようです。
新素材を用いたバットは、その画期的な効果に見合った高額商品。ゆえに、少年野球に励む我が子に買い与えてあげられない保護者もいるとか。そのせいで打撃成績に差が出るなら、誰かが公平を期す策を講じなければならない。そうして徐々にルールの改正が行われていったそうな。
その話を僕は、自分用の高反発素材バットを買い求める野球用品店で聞きました。1年半くらい前だったかな。その頃は少年野球に限った事情と高をくくっていたのだけど、僕らの野球でも昨年後半あたりから規制が始まり、最近に至ってはほぼ完全に使用禁止となりました。
それがなかった時代に戻るだけ。それはそうなのだけど、己の力量を補って余りある革新的な技術の力を知ってしまえば、どうしようもなく口惜しい気持ちに苛まれます。「5万5千円のバットが使えないなんて……」が、ここのところの僕の口癖。セコいと嘲笑いますか? なら、一度僕のバットで打ってみて。どこに当たってもボイ~ンって飛んでいくんだから。

僕の「5万5千円」は、もう二度とケースから引き抜かれないかもしれない。
