観光被害、または観光公害。あるいはオーバーツーリズム問題。呼称はどうあれ、たとえば10月に行った京都や、先月訪れた白馬でも、観光客の増加に伴う地元住民への芳しくない影響があると聞かされました。日本人はおしなべて「おもてなし」の心があるので、遠くから来てくれた人を無下にできない。何よりも経済効果は無視できない。それでも路線バスに乗れないとか、晩飯を食べる場所が奪われるのはしんどいと、皆さん小声気味でこぼしていらっしゃるわけです。
そんな中、こんな記事を見かけました。「深刻な観光被害に悩む、オーストラリアの世界遺産『ウルル』」
「ウルルン滞在記?」と返されるたび少々がっかりしますが、ウルルはオーストラリア大陸のほぼ中央に位置する、高さ335メートルで周囲9.4キロの巨大な一枚岩です。かつては、ここを「発見」したオーストラリア人の探検家の名前にちなんで、エアーズ・ロックと呼ばれていました。
そういう経緯を知らなかった小学6年生の僕は、図書室にあった写真集の中で、夕日を浴びてオレンジ色に輝くその姿を「発見」したのです。授業時間丸々、なぜかその1枚の写真の前から動けなかった。そんな奇妙な思い出を起点にして、20年ほど前に取材の名目で現地を訪れることができました。
先住民にとって極めて重要な聖地であること。ゆえに、以前は許されていた登頂が禁じられていること。そのすべてを尊重するのは当然。僕はとにかく、先住民の伝統的な名称に改められたウルルをこの目で見たかっただけだから。
ところが、件の記事を読んで驚きました。罰則規定を設けたウルル登頂の禁止が決まったのが2019年10月。いやいや、その10年前でもガイドからNGを聞かされていたのに、そんなことになっていたのかと。
記事によれば、観光客によるゴミ被害が絶えなかったそうです。僕もまた、たった一度だけ岩肌にそっと触れた観光経験者に過ぎないのだけど、それを知って怒りがこみ上げてきました。けれどよく考えてみれば、僕だって現代のツーリズムに乗っかっただけ。先住民の人々にすれば、先祖の魂が宿る聖地に踏み入れた不届き者かもしれません。
だからこそ、という部分の解決法はわからないのだけど、どんな場所であれ余所者が訪ねるなら相応の振舞いがあるだろうと、観光地ではない場所に住む身として、そんなことを考えました。

2週間前の白馬山麓。間違って咲いちゃった桜が切なかった。
