告別式に参列したのは、1週間ほど前。事情を伝える文面に触れた刹那、ゆっくりと静かな溜息がもれました。こんなに短期で黒が続くものなのかと。
スーツに向けた愛憎渦巻く思いを抱えながら、知り合いの披露宴に黒のダブルを着て向かったのは11月末。この衣装は、2年前に野球仲間が結婚式を挙げる際につくりました。身に着ける機会はかなり少ないだろうけれど、正式な場にも応じられる一着を改めて用意しておかなければと考えて。
その次にクローゼットから引っ張り出したのが、先述の通り先月末。つまり2年間は出番がなかった。よいことだったのかもしれません。黒をまとう葬儀がなかったわけだから。その件については、披露宴でも友人と話しました。次に着るとしたら、そっちだろうなと。
そうして久しぶりに袖を通したスーツは、すぐさまクリーニングへ。その時点で次回の着用予定はなし。ところが告別式の連絡が来たのは、クリーニングに出している間。仕上がり予定日が式の3日前というタイミングでした。
一度だけ溜息をついたあとは、披露宴との間隔があまりに短いことを含み、この流れに関して深く考えないようにしました。ただただ僕がすべきは、故人に礼を尽くすこと。そこで、クリーニングの袋に入れたまま何年も着ていなかった白のシャツを放棄し、新たに同様のシャツを買いました。それから、探しても見つからなかった黒のネクタイも。
おそらく、体裁を整えることだけに意識を集中したかったのでしょう。コロナ禍に解散したアイスホッケーチームで最後までプレーした、僕より若いメンバーでした。会わなくなった3年の間に彼に起きたことや、あるいはご家族について考えると、いろいろ崩れてしまう気がしたのです。
そんな男を鎧のごとく支えてくれたのが、再びの黒のスーツ。懐かしい笑顔の写真を目の前にしたときは、やはり胸が詰まる思いが込み上げたけれど、「人生にはこういうこともあるからつくったんだろう」と、強く背骨を押し上げてくれたような気がしました。それは、ずっと嫌いだったスーツに救われた瞬間で間違いないと思います。

歩道の黄色。真冬が始まるサイン。
