今月は悲しい別れの会もあったけれど、奇妙にもクリスマス前後で心温まることが続いています。自慢に聞こえるかもしれませんが、実際にちょっと自慢したいので、あえて披露します。
つい先日。20年来の付き合いがある楽器店の若い営業担当が、こんな話をしてくれました。
「この間、仙台で販促イベントをやったんですよ」
それは、東京の本社が定期的に地方で開催する、マーティンというアメリカ製ギターを売るための会です。珍しい機種をたくさん持ち込むらしい。
「そこに3人組の男子高校生が来たんですね。そのうちの一人が、『これを読んでマーティンが欲しくなりました』と一冊の本を取り出したんです。それが……」
ここからは僕に説明させてください。その一冊の本とは、不詳ワタクシが2004年に著した『僕のマーチン君』
「あれはさぁ」と割り込んできたのは、今や同楽器店で重役になった、かつて僕が人生初のマーティンを購入した店で調子のいい口上を並べた男でした。
「ギターを買っただけで本1冊を書いてしまった、とんでもない代物だよな。しかも恥ずかしい身の上話ばかり」
まぁ、すべて正解なので、言い返したい思いをじっとこらえていると、再び営業くんが口を開きました。
「その本を持ってきてくれた3人組全員、それぞれマーティンを買ってくれたんですよ。凄くないですか?」
くわぁって腰が砕けそうになりました。現役高校生であれば、愚著が出版された20年前には生まれていないはず。なのに今の彼らに少なからず響くものがあって、それをきっかけに決して安くないギターを買っちゃうなんて、ねぇ! どういう経緯で僕の本を手に入れてくれたんだろう。事情を直接聞ける機会があれば、オレの初マーティンは40歳だったと小突いてやらなきゃ。
こういう話に触れると、自分がしたかった仕事が誰かの役に立つ可能性を信じていいと思わせてくれます。あるいは、僕の知らないところで今回と似たケースや、「読んで大損。買わなきゃよかった」とがっかりさせた場合もあったんじゃないでしょうか。それでもとにかく、時々で真剣に向き合えば、回り回って心地よい循環に出会えるのかもしれません。20年前のオレ、よくぞ恥ずかしい話を書き殴った! 何かね、来年もやれそうな気分にさせてくれましたよ。

自分をカバーに晒すことからして恥ずかしい本でした。今はどこで買えるんだろう?
