成人の日の月曜、飲み仲間かつ野球のチームメイトが開いた服屋に行ってきました。年末のプレオープンはタイミングが合わなかったので、グランドオープン3日目ながら、この連休中にどうしても顔を出したかったのです。誠に勝手ながら、心ばかりの祝意を示したかったから。
彼の前職は、外から見る限り安定した仕事でした。けれど他人には想像もつかない決意のもと、ひとりで店を出す覚悟を決めたわけです。もう、それだけで大尊敬。僕も個人事業主ですが、何と言っても自宅で原稿書きができる職種とは天と地ほどに規模が異なります。
まず店を構えなければならない。手持ちの建物がなければ、相応の手段を講じて借りなければならない。聞いたところによると、一般住居の賃貸より信用に関する条件が厳しいらしいんですね。彼の場合は事業計画書を作成し、オーナーにプレゼンを行った末に契約を勝ち取ったそうです。ここまでの段取りですでに、僕の限界値を完全に超えております。
そこから内外装の設えや、商品の仕入れや展示や、在庫の管理や宣伝や、それ以外は僕に見当もつかないたくさんの仕事をこなして、ようやくオープンに漕ぎつけるのでしょう。いやもう本当に、様々な投資がほぼ不要の職種でよかったと思います。
さらに店舗運営で恐ろしさを感じるのは、一度構えたら動けないこと。たとえは悪いけれど、店は巣を張ったクモのように、同じ場所で客を待ち構えるわけですよね。それは相当に胆を据えないとやっていけないはず。
ただ、その町の同じ場所に居続けることには希望もあるみたいです。僕が彼の店にいたとき、買い物帰りと思しきおばさま二人連れがドアを開けて入ってきました。
「ここって、前は美容室だったんじゃない?」
「そうそう、40年以上やっていたのよね?」
そんなご近所情報を彼にひとしきり確認して、ろくに服も見ずに出ていきました。「また来るわね」と言い残して。
前の店主がこの町のこの場所で残した何かが、今度の店主にどんな影響をもたらすかはわかりません。けれど40年以上も経営が成り立った運や縁が引き継がれることを心の底から願います。いつもそこにあるって、おそらく町の人々にとっても尊いことだから。職種は違えど同じ独立を果たした者として、可能な限り応援したいです。言いそびれましたが、開店おめでとう。

「トナオさんには」と勧められた、袈裟懸けジッパー付きのモヘモヘセータ―。
