些細な患いと上手いこと付き合うため、定期的に通っているクリニックがあります。そんな打ち明け話はお気遣いのもとになるかもしれませんが、ご心配には及びません。話したいのはクリニックの女性院長についてなので。
小柄で飾り気のないその先生は、どの患者に対しても小気味いい対応をするみたいです。そうとわかるのは、待合室まで響く先生の笑い声がいつも高らかだから。僕に対しても同様です。こちらの勝手な要望としては、症状に応じた処方箋を出してくれればいいだけ。なのに一通り状況を確認すると、たいがい世間話っぽい会話に時間を割くのです。たとえば昨日はこうでした。
「年が明けて忙しいですか?」
久しぶりに会う知人への挨拶っぽいことをおっしゃるから、僕もわりと正直に答えてしまうのです。かなりゆったりとしたスタートなので、今年は大丈夫なのかとちょっと不安になっていますよと。
「フリーだっけ? そうよね。町医者も同じ。今来てくれたら待たせず診られるって思うときは誰も来なくて、なんでこんなに集中しちゃうんだろうという日もあるのよ。そういう波がある感じ、わかるでしょ?」
ええ確かに。仕事量が平均化しないものかと悩ましくなることはしょっちゅうです。
「だからさ、医者は儲かっていいだろうとよく言われるんだけど、実は不安定な事実を会社勤めの人たちはよく知らないのよ。今日がヒマでも、従業員には給料を払い続けなきゃいけないじゃない」
というような、壁の向こうに控えるスタッフに聞かせていいのか気になる話題も、決して声を潜めないのが先生のデフォルト。そんなこんなで思わず笑っていると、最後にはこんなことを言って頭を下げられるのです。
「みんな大変なので、お互い波を乗り越えていきましょう。頑張ってくださいね」
今日も相変わらずだったなと、会計を済ませ処方箋をいただいてクリニックを出たあと、ふと考えたのです。もしやあれは先生なりの、患いの煩わしさを少しでも和らげようとする治療なのかもしれないと。どうなんだろう。けれど実際に僕は、スローな1月の終わりに先生と言葉を交わして、いくらか救われた気持ちになりました。名医って、そんなふうに小気味よく励ましてくれる人のことかもしれませんね。

意味を漂わせる廃棄物だなあと思って。
