仲間内で旅の話になると、思い出深い場所とか、過去一番遠かったところといったお題が持ち上がります。そういう場面では率先して聞き役を務めるのだけど、それぞれが一通り喋ると、自ずと「そこで黙ってるあんたは?」と掘り返されることになります。順番が回ってくる間に、皆がこの話題に飽きてくれることを祈っているのに。
旅に関してなぜ黙るか? 僕があちこち訪れる経験を積めたのは、ほぼ仕事のおかげだから。仕事になれば、アゴ・アシ・マクラが提供される。つまり身銭を切らずに旅ができてしまう点で、自ら望んで旅費をまかなう人の前では、何ひとつ語る権利がないと臆してしまうのです。
自慢するのはおかしいじゃないですか。何度もファーストクラスやビジネスクラスを利用できたとか、子供の頃から行きたかったオーストラリアのウルルを拝めたとか、アフリカのナミビアを1週間近くクルマで走り回ったとか、マルタ島の漁港で地中海料理を堪能したとか、あるいはホノルルマラソンに8年連続で参加したとか、全部仕事なのだから。そういう経験は、聞かれるまで話しません。いや本当に。人の金で自慢するなんてヤツ、僕自身が疎ましく思うし。
以上の海外経験は、思い出深い場所や遠いところがお題になったとき、頭の中で巡らせる旅の記憶です。他方、いくらか積極的に自慢したくなるのは、国内47都道府県のすべてに足を踏み入れた実績です。これはずいぶん前に達成しました。そのメリットは、都道府県の位置関係が明確になったことでしょうか。
おそらく外国のほうが旅の格は上かもしれませんが、個人的には、自国をよりよく知る体験は決して格下の旅にならないと思うのです。言葉が通じたって、各地様々。それに、各都道府県の枠内に足を踏み入れたとしても、全域を詳細に知ることは不可能。
今日の話、全国で唯一店舗がなかった高知県でドン・キホーテが開店したニュースに触発されました。ついうっかり「オレのほうが勝ってた」と驕ってしまい、心のどこかで自慢したい気持ちが巣食っていることに気づかされてしまったわけです。よくないですね。だからやっぱり僕にとって旅は、自慢と背中合わせの、かなり難しい話題という他にありません。

一方で桜は、ようやく蕾が形を現したような状態。ゆっくりでいいよと伝えたくなります。
