静かに退場すべき

仕事を依頼してくださる方々には内緒にしたいのですが、物書きに対する期待値をはるかに下回るほど、僕の読書量は貧弱です。まったく本を読まないわけではありません。おもしろいと思った作品は、寸暇を惜しむようにベージを繰ります。あるいは何かのきっかけで特定のジャンルに興味を持ったら、その周辺一帯を束にして読み漁ることもある。
ただ、職業的な条件を越えて、人として触れておくべき世界の名著の多くを、僕は知らずに今日まで生きているのです。それでよく物書きと名乗れるものだと、我ながら呆れていますが。
そんなわけで自分の読書力の乏しさを痛感しているので、本読みに関してはひとつのルールを決めています。フィットしなかったらすぐに諦める。フィットなんてのは感覚的なものなので、もし読書に対する懐が深かったら、もっとたくさんの本を読めるのにと、そこはとても残念に思います。それでも展開の先に向かって漕ぐ力がないと悟ったら、躊躇せずにページを閉じ、静かに退場します。その作品に対する批評権をすべて放棄して。
話は翻って、今回の朝ドラ。今日から最終週に入りますが、ここに至っても批判の嵐が絶えないようです。ふと目に入ってしまう否定的な記事を読むと、ずっと見てきた僕にも彼らが指摘するポイントは理解できるんですね。正直に言えば、僕も途中リタイヤを考えました。ただし『おむすび』に関しては、番組制作の責任者にインタビューするという縁があったので、義理を通すでもなく、最後まで見届けたいと思ったのです。
そこで声を大にして訴えたいのは、正しく批評するなら最後まで見てからにすべき、ということ。朝ドラは半年放送の物語なので、視聴者にも苦楽がつきまといます。だからこそ、それを乗り越え最終回まで確認した者にだけ、制作者に真の感想を述べる権利が得られる。それを放棄した者は、つべこべ言わず静かに退場すべき。僕はそう思います。
などという正論が、むしろ偏向を良しとするネット方面で弾かれるのはわかっています。けれど自分も文章を書いて世に出す側の人間なので、名もなき権限については慎重かつ大事に扱いたい。そんな意見を口にするのも、まずは今期の朝ドラを見届けてからでしたね。何だろう、世間の騒音とは別に、自分なりにフィットするところがあったんだろうな。

大渋滞の中で見上げた都会の構造物。後づけ追加延長だからか、複雑よね。

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