今から19年前、あるメーカーの伝統を継承する新製品の誕生秘話をまとめた、とても豪華な印刷物の編集に携わりました。ずいぶん前だけど、よく覚えています。各工程の責任者に話を聞くため工場へ行き、1日がかりで全7組を各50分枠でインタビューしたんですよね。学生時代でも、それほどの缶詰め授業は経験しませんでした。最後のほうはメモする右手首が痺れたけれど、それがこなせたんだから怖いものはないと思えた、ある意味では僕の記念碑的な仕事になりました。
とは言え19年前ですから、すっかり忘れているわけです。そんな今年の1月、印刷物のプロデュースを行った会社から連絡がありました。メールに記された名前が初見だったのは、長い時間が経った証そのものでした。
「かつての印刷物の再編集版をつくることになったので、あなたが書いた原稿の二次使用を認めていただきたい」
以上が連絡事項の要約。その著作権を尊重する依頼が、まずうれしかったのです。個人の権利の無視はあってはならないこと。けれど著者をないがしろにするケースは、おそらく著者が気づかないところで進行している可能性が低くありません。
著作権についてよくわからなくても、何でも複製できてしまう時代であることは、皆さんも承知されているでしょう。中でもテキストファイルは、特にコピーが簡単で、日本語が書ければ誰でも手を加えられます。なおかつAIの席巻が著しいから、コピーの寄せ集めがオリジナルとなり、新たな著作権を主張するようになるかもしれません。
だからこそ著作権はますます大事にされるべきと考えていた最中、件の連絡がきたわけです。メールをくれた方は、前任者をたどりたどって僕の連絡先を調べてくれたんじゃないでしょうか。それがたとえ組織業務の一環であっても、あるいは権利関係の基本であっても、個人を守ろうとしてくれた姿勢に感銘を受けないはずがありません。納得できる二次使用料の提示も頂いたし。こういうことって、案外少ない気がします。
そんなこんなで、しんどかった取材を知らない現担当者と連絡を取り合う間に完成した再編集版が、手元に届きました。大事にします。

最近こいつら妙にうるさい。繁殖期か?
