「フェラーリだぞ」

今日はイタリアの共和国記念日。第二次大戦後の1949年6月2日、1861年に成立した王政を国民投票で共和制に改めたのが由来だそうです。戦時中は、独裁者として知られるムッソリーニがファシズムで国を制圧し、やがて惨憺たる結果を招いたので、戦後の国民は一致団結して新しい国の在り方を求めたのだと思われます。
僕が初めてイタリアに行ったのは40代の前半。数ある取材旅行の中でも決して忘れられないものになりました。発表直後のオートバイでサルデーニャ島からローマへフェリーで渡り、その後ボローニャまで走るという、役得以外の何ものでもないツーリング企画。この旅は、ローマでの単独迷子を始め、記事にできなかった出来事があまりに多かったのですが、ふと思い出し、今でも申し訳ない気持ちになるのは、ローマで出会った駐車場係のおじいさんです。
ボローニャに向かう前日、トレヴィの泉などを散策した後に宿へ戻ったら、僕ら日本人一を発見したそのおじいさんが、「お前ら、ちょっとついて来い」と声をかけてきました。言われるまま宿の駐車場の奥についていったら、そこにあったクルマのカバーを、たぶん勝手に剥がしながら、「フェラーリだぞ。日本人は見たことないだろ?」と。その表情がめちゃくちゃ得意げだったんですね。
しかし僕は、おじいさんが期待した反応を示せなかった。なぜなら、型は忘れたけれど最新型ではなく、より新しいモデルは青山の骨董通りの路上パーキングでも見られるのにと思ったから。
あれはよくなかった。おじいさんの親切や、母国への思いを考えたら、たとえ嘘でも「これがフェラーリ?」くらい驚いて見せる敬意を払うべきでした。それができなかったのは、ある意味では戦後の日本人の成金的卑しい根性が染みついていたせいかもしれないと、今ならそう反省することができます。
戦争終結を一つの区切りにしても、国の経緯は様々。まぁ、駐車場のフェラーリはおじいさんのものではなく、骨董通りのそれも僕のものでもないのだけど、イタリアの特別な日に際して、僕は懺悔を語らせていただきます。

赤色が際立つだけのダメな写真。でもまぁ、もう梅雨っぽいと思って。

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