どの世界にも常識や通説というものがありますが、それがどうした? って話です。この件を具体的に語りたいがため、野球方面の例を挙げます。
野球の内野守備では、基本的にファースト以外は左投げがいません。端的な理由は、確率的に不利だから。
ちょっとややこしいんですけれど、反時計回りでランナーが進む野球のルールにおいて、打球を捕ってファーストに送球する内野の守備は、左投げだと体が開くのでワンテンポ遅れがちになる。つまりアウトが取り難い。ゆえに内野は右投げの選手だけの場所になりがちです。利き腕の有利不利は、いたるところにあるわけですが。
ちなみに左利きの選手は、守備に関してはピッチャーか外野を担当するのが一般的です。一方で打者は、右打ちと左打ちに大きな差は生じません。ただ、1塁に近いことで左打ちの打者のほうが多少有利。なので、投げるのは右。打つのは左という器用な選手も少なくありません。
以上が前置き。ここからは、右だの左だのを超越した、夏の甲子園の話題。準決勝まで勝ち進んだ県立岐阜商業高校に、生まれながらに左手の指が欠損している外野手がいました。僕は事前情報を何も知らないまま、たまたま件の高校の試合を観たんですね。やはり気になったのは、その彼がどう守り、どう打つのか。
守備に関しては、グラブを右手にはめて球を捕り、投げるときはグラブを外して右手で投球。その動作が極めてスムーズでした。打撃は、言われないとわからないくらい普通というか、力強かった。
そうだろうなと思ったんです。もちろん、野球の道具は指の欠損を考慮しないので、彼が健常なチームメイトより何倍も努力したことは想像に難くありません。ただ彼にしても、そうしなければ試合に出られないことはわかっていたはずです。
本日何が言いたいかというと、常識を覆す起点になるのは、壁を突破しようとする一人の人間の登場。それに伴って通説を覆すには、彼に野球を諦めさせず、彼の努力を認めた人たちの存在が不可欠ということなんです。
たとえば僕らの仕事でも、良し悪しを判断する人の裁量で結果が違ってしまいます。場合によっては人生に影響が出るかもしれない。そんなことを考えさせられたのが、彼と彼のチームでした。

珍しく玄関前にスズメバチ。自ら危険を誇示する色目は、やっぱりアナーキーだよな。
