日付的には2日遅れですが、8月26日に日産自動車のGT-Rというクルマが生産終了になりました。僕はこの件を、当日の夜のNHKニュースで知りました。工業製品の生産が終わるのは決して珍しい話ではない。なのになぜNHKはGT-Rに限って取り上げたのか。それについて考えてみました。
GT-Rは、要するにスポーツカー。もともとは、1969年に登場したスカイラインというクルマの高性能版で、名称はスカイラインGT-Rでした。スカイラインは、その高性能版を時折設けながらモデルチェンジを繰り返してきたのですが、2007年になり、スカイラインから独立した単一モデルになります。その最期が2025年なので、GT-Rの名前は56年も継承されてきました。
そうした時間的な重さに加えて、存在の異端さもこのクルマの特別な物語となっています。スポーツカーと一口に言っても様々で、たいがいのそれは、素人ながら定期的なジム通いで均整の取れた肉体を備えたイケメンみたいなものが多いんですね(あくまで個人的見解ですが)。
しかしGT-Rのイメージは、そのまま競技に出場可能なスペックを持ち得ているというものでした。たとえて言うなら、陸上短距離100mの選手が履くスパイクみたいな感じ。ゆえに「そんなの街中で履いていいの?」という、クルマ好き男子を高揚させ続けたクルマだったのです。
その生産が終わり、最後の1台が工場から出るところをNHKは報じていた。その主旨は、「今、ひとつの時代が終わりました」ってことだと思うのです。日産の経営が芳しくない背景も語られていたけれど、約3800㏄で570馬力のエンジンを積む、ほぼ2人乗りで最低1400万円代のクルマは、もはや確かに時代の現実性と乖離している。うがった見方をすれば公共放送は、その事実を国民に知らしめたかったのかなあと。まぁ、時代の節目を的確に伝えるのがニュースの役割なのだろうけれど。
この件に関し、実は意味不明な憤りを覚えました。たぶん、GT-Rの終焉にまるで気づかず、その他の出来事と同じように知ったことが、かつてクルマ好き男子だった自分への裏切りに感じたからかもしれません。とは言え、我がオンボロが今日も無事に走ること以外でクルマへの興味が薄れたのは、もうずいぶん前なんですよね。僕の中の少年はどこへ行ったのだろう。
立ち入り不可の更地にベンチ。座り手知らずの椅子は、案外多い気がする。
