代打

野球に関心がない方でも、代打の意味はそれとなくご存じと思います。漢字が示す通り、それまでの選手に代わって打つ打者ですが、カタカナのピンチヒッターだとより立場が明確になります。
一般的に野球の試合で代打が登場するのは、およそ後半。逆転のチャンスを迎えたときに声がかかりやすいので、期待に応えて打てればヒーローになれるし、そうでなければ見る者に残念な記憶を残すことになります。
そうしたプレッシャーを含めて代打が難しいのは、途中から試合に出ることです。出番が来るまでゲームを見てはいても、グラウンドに漂う空気の流れはつかみ難い。なのに、たった1打席で試合の行方を決しなければならない。ゆえに重要な場面で代打を任されるのは、経験豊富なベテランになりがちです。
さておき、僕の仕事領域でも、稀に代打が巡ってくることがあります。ただし野球と違うのは、最初から控え選手の枠にも入っていないところです。つまり代打を告げられた瞬間には、その仕事の全体的な経緯が不明。なおかつ担当者は、およそ代打を口にしません。おそらく、先発メンバーとして起用しなかったことに引け目を感じるからでしょう。
それでもまぁ、年数だけは経ているベテランですから、電話であれメールであれ、ピンチの気配は感じ取れてしまいます。わかりやすいのは、著しく急な締め切り。何かの理由で沈没に至りそうな突貫工事が必要になった状況は、スケジュールの慌ただしさでつかめるのです。
こういうケースで不要なのは、妙な気遣いでしょうか。それよりも、たとえ言い難くとも「もはや泥舟と化し、多くのネズミが逃げてしまったので、ぜひピンチを救って!」と訴えてもらったほうが対処しやすくなります。
これはフリーランサーの心構えにしていいのかもしれませんが、代打であっても自分の名前がリストに載っているのが重要と思っています。そしてまた、代打で結果を出し続ければ、そのうち先発が回ってくるかもしれないと考えたりもします。いやでも、誰かのピンチを救える爽快感に酔おうとする気持ちのほうが強いかなあ。
つい先日も、そんな代打に立ちました。原稿提出後の流れはいまだ見えませんが、誰も溺れていないことを祈るばかりです。

蒸し暑かった新宿で遭遇した立派な寺院。調べたら開創400年の歴史があるそうな@東長寺。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA