アメリカ式の粋

「また野球ネタかよ」と呆れられても、年に1度あるかないかの素敵な瞬間を見た感動が抑えきれないので書きます。
例によって、メジャーリーグのドジャース戦。現時点で222勝96敗という、つまりは極めて負けない生きる伝説たるクレイトン・カーショウ投手が、現時間の18日に今季限りで引退する旨を発表。すでに37歳の大ベテランで、怪我との戦いも増えてきたから、致し方ない潮時なのでしょう。
その翌日、本拠地のロサンゼルスで行われた試合に先発登板。これは予定通り。残り10試合を切った今シーズン中は、まだ別の試合に出場する可能性があるけれど、ホームゲームの登板はこれが最後。カーショウは移籍が著しいメジャーリーグで18年間もドジャースに居続けたので、前日の引退発表は、ファンの前でお別れをするという意図があったのかもしれません。
さて、ここからが本題。試合開始の時間になると、まっさらのマウンドにカーショウが向かうわけです。通常であれば、それに合わせて内野と外野の選手もフィールドに出る。のに、誰も出てこない。近年のメジャーリーグは試合時間の短縮に神経質。にもかかわらず、試合が始まらなかった。
何が起きたかというと、相手チームの選手や審判も含め、全員がカーショウ一人に注目が集まる時間をつくったのです。ぞわわと鳥肌が立ちました。カメラがスタンドで見守るカーショウ夫人を抜くと、すでに号泣なんですよね。もらい泣き必至でした。
ただしこの日のカーショウは調子がイマイチ。2点を取られて劣勢中だった5回、最初の打者を三振でアウトにした直後に交代が告げられました。けれどこの降板も、観衆の目が向くマウンドの上で行われたのです。
その時点では負けの最中。なのにまた、その場にいたすべての人がカーショウに拍手をたむける時間がつくられた。この演出って何なんだと、なぜか怒声を挙げた後、いや違う、粋な計らいなんだと自分を諫めました。確か昨年、同じドジャースのフリーマン選手が子供の入院付き添いから戻った試合でも、似たシーンがあったんですよね。
それはきっと、勝っていても負けていても、敵であっても味方であっても、偉大な個人に対する尊敬の念の伝え方なのでしょう。アメリカ式の粋は、華々しくて清々しかったです。
でもって負けないカーショウが交代した後で、大谷翔平選手が逆転ホームランを打つんです。そんな滅多にない感動的な試合に出会えると、ずっと見てきてよかったと心から思うんですよね。ただのファンじゃねぇかって話ですけれど。

ネムノキ類? 素敵な緑色と思って。

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