近所にできたレモンサワー専門店。つい最近になり、ようやく扉を開けることができました。レモンの知識を学び取り、なおかつ産地からの供給方法を徹底的に整えたオーナーが、数年前に一度だけ別の店で会ったのを覚えていてくれたのがきっかけです。それにしても、飲食関係者の記憶力は尊敬に値しますね。
専門店ゆえ、メニューはレモンサワーが軸。僕はまだ3種類しか飲んでいないけれど、どれも居酒屋でぐいぐい空けがちなレモンサワーの概念を粉々に砕くほどの上手さです。いや、そんな安易な表現ではなく、ひたすら丁寧と称すべきでした。
そのレモンサワー屋さんと前後して、餃子専門店を長く営んでいる方と会いました。中国にルーツを持つそのオーナーは、かつて横浜の中華街で働いていたそうです。言うまでもなく中華街は、チャイニーズレストランのカオス的エリア。しかし縁あって独立を考えたとき、当時はひとつのメニューにこだわった店がなかったことに閃いた。本場の水餃子ではなく、日本人が大好きな焼き餃子専門にしたのは、この国で生き残っていくため。そこからの奮闘記は、すぐに訪れたいお店で聞かせていただきたい。って思うだけで口が餃子になるな。
すべからくメリットとデメリットがあるにせよ、専門で行くと決めたら、横軸の狭さを覚悟しつつ、縦軸の先鋭化、または特化に注力されるのでしょう。そうだとしても、ずっとひとつをやり続けるのは、専門を選ばなかった者には計り知れない勇気が不可欠と思います。
フリーランスライターになったとき、僕は自分に専門を課さないと決めました。それまで身を置いていた自動車方面から卒業したかったことに加え、ジャンルに関係ない仕事をしたかったからです。そこで特化すべきと考えたのは、インタビュー取材の巧みさ。話を聞いて書ければ、専門を謳わなくてもいけるんじゃないか。そんな目論見が当たったかどうかは不明だけど、ひとまず今はまだこの世界で生きている。
ただ、過去の仕事によって、僕の知らないところで僕の専門が語られているみたいです。あるいは、初めての方には必ずジャンルをたずねられます。その際、インタビュー取材と答えても明確な反応が得られないケースが多いので、やっぱり専門を持つべきだったかと不安になります。あれこれ手遅れなので、一瞬だけですが。
僕の身の上話はさておき、今もっとも叶えたいのは、専門店のレモンサワーと餃子を同時にいだたくこと。店が離れているから無理っぽいけれど、叶ったら悶絶間違いなしですよ。

他に誰もいないエスカレーター。どこに連れていかれるのか、ちょっと不安になる。
