精度

メンズファッションブランドを立ち上げた人を心の兄貴と慕うのは、莫大な量の知識や見識を、年下の僕との他愛なき会話の中で深く静かに滲ませてくれるから。なおかつ、相当な経験値を持ちながらも新たな気づきに貪欲で、話題が常に新鮮なのも尊敬に値します。
その心の兄貴に今月半ばに会ったとき、こんな話をしてくれました。「やっぱり大量生産の精度は凄いな」
自身が統括するブランドで、アメリカ発の有名ブーツブランドとコラボシューズを企画。田ブランドとのコラボは初めてではないのに、世界中に知れ渡っているブランドが支持される理由を、大量生産だからこそ可能するべき製品精度から発見できたそうな。
僕も意外でした。「職人がひとつずつ手づくり」みたいな物のほうが、価値が高いような気がしていたからです。しかしつくり手にすれば、自分のキャパシティでは実現し難い技術と経験が自社製品に投入されることによろこびを感じるのかもしれません。あるいは大量生産を主とする相手も、少数だから可能になるコスト度外視のアイデアにヒントを見出すのかもしれない。おそらく、そうしたやり取りを通じて、つくり手同士の共鳴や共感が湧き出るのでしょう。
そんな話を聞いたあと、JAXAのH3ロケット8号機が打ち上げに失敗したというニュースが入ってきました。HⅡシリーズの後継機として開発されたH3の打ち上げ費用は、HⅡの半分の50億円。しかも設計と開発を請け負う三菱重工が、受注に応じてすぐにつくれるライン生産方式を採用。それら総力の結集で低コストを叶えるのがH3とされています。
なのに8号機は失敗。その原因がコスト削減にあるのかどうか、僕にはわかりません。開発を繰り返して大量生産が可能になる頃には、自ずと精度が上がっていくのかもしれない。けれど、いくらでもロケットがつくれるなんて、あまり清々しい話題じゃないなあと思います。
それよりも、ビッグブランドならではの精度が生かされたという、クールなデザインのコラボシューズのほうがはるかに気になる。気になったらダメですね。予約注文してしまいました。「いいの?」という心の兄貴の言葉は、来年7月に高精度で展開される、忘れた頃の代引きショックを案じたものだったのかもしれません。ま、いいか。失敗のないカッコいい靴だから。

町のどこからでも見えるクレーンが再び1機に! 高精度で似ているから、どっちが去ったのか不明。

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