伝えたいという強い気持ちの前では

「何かを書き残したい!」という意欲を持っている人が少なくないようです。そんな方々の多くは、すぐにでも書き込めるSNSの類ではなく、1冊の本にしたい希望を持っていらっしゃる。手に取れる印刷物のほうが、形として残す意義を確かなものにしてくれるのかもしれません。
不確定ながら、営業職の友人からこんな依頼を受けています。孤軍奮闘してきた独自のメソッドを、自分の後継者の参考書としてまとめたいらしいんですね。そういうのは口頭でも伝えられるんじゃないかと言ったら、日々の業務の中でじっくり話せる時間が取り難いと返されました。
このケースでは、インタビューによる聞き書きが求められています。であれば、僕でも協力できる。ただし、自分の言葉を他人に著される習慣がない人は、いろいろ迷われるのが常です。なので、しっかり伝えたい部分を然るべき場所に置くための組み立てなど、長い文章を最後まで読んでもらえるよう、説得力をもって整えていくのが僕の務めになると思います。実際にやるとなったら、なかなか大変ですけれど。
一方で、やはり心血を注いでいる仕事に関して、すでにあれこれ書き留めている方もいます。いつか本にできたら、という願いのもとに。
この方からは、特に依頼を受けていません。そういう習慣があると話してくれただけ。もし具体的な発注があれば、基本的には先と同じ方法で協力できるでしょう。でも、そんなおこがましい話はせず、ただの感想を口にしました。どうしようもなく書きたいことがあるのは素晴らしいですよねと。
本当にそう思うのです。僕の生業は物書きだけど、目的が明確な発注があって成り立つ稼業なので、技術や経験による個性ないしは癖が出るにせよ、個人の我や欲望を押し出したりしません。というより職業的には、どうしても取りたい仕事はあっても、どうしようもなく書きたい衝動に駆られる機会が少ないのです。振り返れば僕の場合は、おそらく一度だけ。それが本になったのは幸運という他にありません。
そんなわけで、「何かを書き残したい」と思ったなら、形になるタイミングに巡り合うまで、その意欲を保ち続けてくれたらうれしいです。話し方や書き方の上手下手など気にしなくていい。そんなものは、伝えたいという強い気持ちの前では意味を成しませんから。

電車も顔なのかな。

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