「別にまったく同じじゃなくていい」

おおむね文化の違いについて話したいのですが、まずは野球の話題から。
2月も中旬となり、メジャーリーグ各球団がキャンプイン。これが始まると、親切なYouTubeは速報動画を流してくれます。
その中に、ドジャースの山本由伸投手に関するものがありました。トレーナーの指導のもと、投手グループの約20名がウォーミングアップをする映像。個性が強い選手たちでも、全員そろって同じ動きをするのは、開始早々のキャンプならではかもしれません。
フォーカスされた山本投手はというと、全体に合わせつつも、ほぼ流していました。その場の彼にとって優先されたのは、新加入した大物投手との会話だったようです。コミュニケ―ションは大事。でも、これが日本だったら「お前ら喋ってないでちゃんとやれ」と叱れるんじゃないでしょうか。
その映像を見ながら、こんなことを思い出しました。初の英国取材で、シルバーストーンという世界的に有名なサーキットへ。そこでどうしても混ざりたかったのが、小さなレーシングカーの体験走行会。最初に説明されたのが、一人乗りマシンの乗り方。インストラクターが手本を示してくれたあと、手から足の運びまで同じ手順を真似て乗り込んだら、にべもなく「別にまったく同じじゃなくていい」と言われたのです。
インストラクターにすれば、人もクルマも傷つかなければ何でもよかったのでしょう。けれど僕は何も考えず、ただ同じであるべきと思い込んだ。本当に些細な場面だったけれど、目的に向かう指導の、洋の東西を実感した瞬間でした。
メジャーリーグに戻りますが、彼の地のコーチやトレーナーは、選手から聞いてくるまで具体的な指導をしないそうです。理由は、自分たちが先行すると強制になりかねないから。他人に従うのではなく、自分に従う主体性が大事ということなのでしょう。
そういうの、いいなあと感心します。が、いかに主体性を尊重しようと個人が結果を出さなければ排除される。そうした社会が土台になっている事実を見落としちゃいけないですね。そんな清々しいまでの残酷な世界で、山本投手は楽しそうに喋っていました。もちろん、約12分の動画で誰かに叱られる場面はなく、変な心配をする自分の日本人らしさだけが浮かび上がったという、ただの可笑しい話です。

紅もよく咲いている。

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