時速100マイルの正論

触れるべきではないと知りながら、感心しきってしまったので触れることにしました。
金曜日の午前中に出会った『大谷翔平が語るWBCベネズエラ戦と投球調整』というタイトルの動画、よかったら観てください。この人が持つ強さに潜む怖さが伝わってくるはずです。
観てくださいと言ったので、観ていただければ一目瞭然ですが、開催中のWBCで移動したマイアミでの記者会見映像です。
難しい種類の対応と思うのです。記者との一問一答は、場合によっては失言を拾われかねないから。しかし大谷さんは、彼のパフォーマンスそのままに、あらゆる芯の外し方を心得ていました。
代表的だったのは、異なる言語でたずねられた、対戦チームの国柄や人柄に関する質問でした。おそらく記者は、アジア圏はこう、中南米ならこうと、個々の違いを詳細に話してほしかったのでしょう。大谷さんの応じ方は、おおむねこんな感じでした。
「特色に違いはあっても、野球に関してはどのチームも同じルールで戦っているので、大きな違いはないと思っている。また、野球が僕らの言語だから、それをもとにコミュニケーションがとれたなら、この大会は素晴らしいものになる」
口にしないんです。あの国はこうとか、この人はどうとかなんて。この類の発言が意図せぬ扱われ方をされる危険性を理解しているからだろうけれど、その何段も高い次元で、「野球が僕らの言語」と軽やかに言い放つのです。
間違いなく大谷さんなりの正論なんですよね。けれど、そんなの普通はおもしろくありません。他の選手なら、「アイツいつも同じように答えるから聞かなくていいや」となりそうです。けれど大谷さんのそれは、誰も打ち返せない時速100マイルの正論。呆然と見送ることしかできなくても、それでも見たいものなのでしょう。
記者会見映像を観るとき、僕は自然と質問者の視点に立ちます。いい聞き方するなあとか、それをたずねてもなあとか、聞き手の資質を意地悪気味に探りながら。けれど件の会見は、記者が気の毒になりました。それぞれ質問を練ってきただろうに、大谷さんの前で完全に飲まれていたのが手に取るようにわかったからです。彼は顔を上げ、質問者に目を向け、淀みなく言葉を発するんですね。そりゃもう圧倒的ですよね。
そこで湧く疑問は、どうしたらそんな人物になれるのか? 親目線でも聞きたいかもしれません。どうしたらそんな子に育つのか? とは言えこの類は、記者会見で聞くべき質問リストから除外確定です。

散った梅とこれから咲く桜の間をつなぐのが白木蓮なのかしら。

 

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