春なのか

悲報です。昨日のここで、ささやかな幸福を実感して「春だなあ」と呑気につぶやいた直後ゆえ、気持ちが墜落まがいに急降下しました。
近所の飲食店が閉店するらしい。さっき、開店準備を始めるはずのタイミングで店前をのぞいてみたけれど、人の気配がありませんでした。となればやっぱり、願う噂ではなく事実みたい。
大好きでした。料理はもちろん、家族経営の店柄が。遅めの時間に一人で寄って、他のお客さんが引けていくと、カウンターの向こうはファミリー感が増して、なんだか親戚の家に遊びに来ている気分になれた。この件がこの町に広まってくと、その店の名物が食べられなくなると嘆く人が出てくるに違いありません。けれど僕は、大事な居場所が消えてしまった喪失感のほうが大きいです。
件の飲食店(仮称A)が閉まる情報は、別の飲食店(仮称B)の主人が教えてくれました。1週間ほど前、Aのご主人がふらっとBに顔を出し、おおむねの顛末を話したそうな。大家と家賃更新で揉めていたという話は、たぶん2年くらい前にAのご主人から聞いていました。かなり不条理な条件に憤慨を露わにしたのは、他のお客がいなくなった親戚タイムだったからだと思います。閉店に至ったのは、その交渉が決裂した結果なのだと。
「タムラさんにもお伝えできなかったんですよね」
Aのご主人はそうおっしゃったそうです。実のところ、ほぼすべての常連に告知しなかったらしい。その理由は聞いていません。でも、そうせざるを得ない事情があったのでしょう。Aのご主人は、すでに別の場所で再オープンするのとは違う理由で引っ越ししてしまったとか。となれば、あの家族には二度と会えなくなってしまうのだろうか。
こうなると、僕を落胆させた悪人を探したくなります。適任なのは、地域の発展的価値を高く見積もった大家だろうか。いやもう、よくよく考えてほしかった。町の宝と言うべきささやかな名店が、欲張りのおかげで出ていかざるを得なくなるのがどれほどの損失かを。などと叫んでも、もう届かないんですね。本気で恨ますが、名前も顔も知らないのはせめてもの救いかもしれません。
春なのか、と思います。出会いもあれば別れもある季節だから。いずれにしても、それぞれ事情があることだから詮無いし、どうしよもなく切ないです。

雨にも風にも負けず、日が暮れてもなお咲いています。

 

 

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