誰も知らない3月3日の奇跡

他の誰も気に留めていなくても、自分だけは忘れられない日というのがあります。それは綺麗な箱に収めるべき仰々しい記念日というような類ではなく、むしろ常にポケットに忍ばせて時々握りしめる鍵のような、今日に続く扉を開ける記憶を刻んだ日。上巳。桃の節句。あるいは雛祭りとされる日の夜に、今は無き店のカウンターで男3人で飲んだときのことなので、余計に思い出深いのです。
ある社長を囲んだ会でした。僕を含む他の二人は、以前からその社長の会社の仕事を請け負っており、ゆえに形式としては接待に当たるのだけど、そういう小さい関係性など気にする必要がないごく個人的な集まりでした。飲みに行きましょうと僕が最初に声をかけたのは、確か前年の8月の喫煙所です。極めて多忙な方だったので、実現までに半年を要したのも記憶を濃くした要因かもしれません。
話を相当に端折りますが、その席で社長は僕に新しい仕事を依頼してくれたのです。これまたざっくり言えば、社長の日々の思いを社内SNS用に掲載するための原稿書き。そうした内部的な記事は、情報漏洩の観点からも社員がまとめるのが一般的です。にも関わらず社長は、飲みの席で突然僕に振ったのでした。自分で書く時間が取れなかったのが懸案だったらしいのですが、「これはいいアイデアだ」とその場で自画自賛していらしたので、たぶん思い付きだったのでしょう。
それが2014年の3月3日。当時は人生の沼に腰まではまっていた僕にとって、社長の依頼は目の前に落ちてきた、ただ手を伸ばせばいいだけのロープでした。僕の個人的なピンチを知る由もない社長がなぜロープを放ってくれたのかは不明です。なぜなら理由を聞いていないから。というより、聞かないほうがいいような気がしたから。
その仕事は現在も続いています。社長が別の会社の社長になっても。あるいは対面で始まったインタビューが電話取材に変わっても。結果的であれ危機を救ってくれた事象はいくつか経験してきたものの、中でもこの仕事は我が人生における最上級の奇跡です。
いかにして奇跡を途絶えさせないか? その方法を考えるためポケットに忍ばせ記憶の鍵をもっとも強く握るのが今日なのです。そんな日があなたにもあるんじゃないかと思います。僕の場合、ただの偶然だけど雛祭りという節目に当たっているのも、何というか奇跡的なんですよね。

先月の北海道の氷瀑付近の雪は、足跡をつけると青く光るように見えたのだけど、わかる?

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