慢性

いわゆる町医者から聞いた話です。治療法や治療薬の進化により、かつては我慢してもらう他になかった症状が一気に改善されるようになって、実はうれしさより失望のほうが大きいというのです。
「だって、その注射だけで何十年振りに熟睡できたと言われたら、これまでの私は何をやってきたんだろうって思っちゃったのよ」
お気付きの通り、女性の医師です。快活な方なので、近所の信頼が厚いようです。それにしても、患者に喜びを与えられたなら医師として立派じゃないかと思うのですが。
「失いかけた命を救うのも医療だけれど、日々を快適に過ごしてもらうお手伝いをするのも医療だと思うのよ」
おっしゃりたいのは、たぶん慢性を諦めないということなのでしょう。
何かにつけ一度は受け入れることを勧められるのが最近のご時世ですが、わかったふりして受け入れてしまえば、やがて常態化してしまう不自由さも取り込んでしまうのではないでしょうか。急激な悪化が見られなければ、それも仕方ないと痛みや苦みに一人耐える形で。あるいは先の町医者の場合は、急激な改善が見込めない医療を施しつつ、それも今は致し方ないと思いながら医師としての痛みや苦しみに一人耐えてきたのかもしれません。
以上の話は、病に限ったことではないのでしょう。昨日より今日は調子がよくても慢性の縛りが解けずにいるのなら、決して諦めない第三者に相談するのがよいのだろうと思いました。

車窓から梅林。

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