国内に数百万本から1千万本が植えられているというソメイヨシノは、1本の木から接ぎ木され全国に広がった、そのほぼすべてが同じDNAを持つクローンであることは有名な話です。僕は今年になって知りましたが、2月1日からの累積最高気温が600度を超えると開花するという法則が成り立つのも、人間の手による複製植物だからなのでしょうか。
そんなふうにクローンの部分だけ抽出すると、ちょっと薄気味悪い感じになりますが、それでもソメイヨシノが愛しく見えるのは、こんな理由があるからだと考えます。
わずか数メートルしか離れていなくても、花の付け方や散り方はそれぞれに違う。なぜならたぶん、根が生えている土や、日当たりや風の当たり方といった状況が微妙に異なるからです。ゆえにまったく同じ遺伝子を持っていても、後天的な環境によって育ち方に個性が出るのではないだろうか。
僕はそこに救いを感じます。この世に生まれる前から具えられた条件や要素は変えようがないけれど、生まれた後の生き様によってはどうとでも咲ける。もちろんソメイヨシノは根を張った場所から動けません。そこは気の毒だけれど、移動が可能な僕らは、自らお日様や風の当たり方を変えることができる。風に舞う花びらとともに劣等感もどこかへ吹き飛ばそうというのがオチですが、どうでしょう?

ごく近所のソメイヨシノさん、この子は他より散るのが早かったみたい。
