8月のどこかで放送された『ローマの休日』。もう何度も観たんだけどなあとつぶやきながらも、オンエアのタイミングを捕まえた偶然がうれしくて、テレビの前から離れませんでした。
それが局の狙いと悟ったのはしばらく経ってから。以降ほぼ毎週、オードリー・ヘプバーンの主演映画が用意されました。まぁ、つられちゃいますよね。そう言えば他の作品をちゃんと観た覚えがなかったし。
僕が鑑賞させていただいたのは、『ローマの休日』の翌1954年に公開された『麗しのサブリナ』と、1967年の『暗くなるまで待って』。『ローマ』と『サブリナ』は、ある種のセット作品と言っていいかもしれません。『ローマ』のオードリーは、身分を隠して束の間の自由を楽しむ某国のお姫様。『サブリナ』では大富豪の兄弟に恋する豪邸住み込みの運転手の娘。要するに立場や地位が逆転しているわけです。
『暗くなるまで待って』は、50年代のモノクロから一転してオールカラー。盲目の夫人を演じるオードリーも映画公開時には38歳になっているし、物語自体もサスペンステイストなので、『ローマ』や『サブリナ』とはまるで異なる世界観を披露します。
それでも、という言い方はおかしいかもしれないけれど、個人的な欲望はオードリーの映画に『ローマ』の中の彼女を求めてしまうのです。それが無理なことは重々承知しています。『ローマ』撮影時のオードリーは23歳で、その若さのままいつまでもアイドル的な活動はできない。俳優としても様々な役に挑戦したいだろうし、周囲もそういう期待を彼女に寄せていく。それでもなあ……。
結論はこうです。『ローマの休日』のオードリーは、女性なら誰もが彼女のようになりたいと憧れるような、男性なら誰でも彼女に恋をしてしまうというような、唯一無二のicom(聖像)を示してみせた。鍛えられた演技力であれ持って生まれた才能であれ、それが煌めく瞬間をあのフィルムが記録したことは20世紀の奇跡とさえ思うのです。モノクロームの懐かしさも記憶の定着に貢献していますよね。実は予算が少なくてカラーフィルムを用意できなかったらしいのですが、それもまたミラクルじゃないですか。
どのシーンにもっとも心をつかまれたか? これ、言わないでおきます。

頑な蕾って、開いた花弁よりも……。
