先日、いわゆる二十年来の友人が勤める会社から、『役員変更のお知らせ』と題したPDFが送られてきました。この類、以前は郵送だったけれど、今はメールなんですね。
さておき、その『お知らせ』における最大のトピックは、僕の友人の名前が専務取締役という役職名の下に記されていたことです。こういう事実に触れると、あれこれ考えます。専務ってどんな立場だったっけ? といったところを起点に。
一般的には企業の方針や経営戦略の責任を負う、経営サイドの偉い人なんですね。『お知らせ』には株主総会での決定と書いてあったので、当人がなりたくてなったというより、これまでの業績に鑑みて選ばれたってことなのでしょう。それはやっぱり偉いことです。
この件、通知が来る少し前、いつも通りの仕事を終えた後の飲み会で、本人から直接聞きました。その会には、彼の部下というより僕も顔なじみの若手数名が参加したんですね。遠慮なく飲み食いしていた若手たちは、彼のことを部長と呼んでいました。別人に思えるくらい新鮮だったな。常に1対1で仕事をしている彼のことを、僕は名前で呼び続けてきたから。
となると、その若手たちは彼のことをすでに専務と呼び変えているのだろうか。互いの気持ちはどう変化するのだろうか。あるいは若手たちは、「自分もいつかは専務になりたい」と思うのだろうか。そんなことが気になったりします。
役職ってどうですか? 僕はよく、然るべき立場に就き、求め以上の結果を出している方々に話を聞きます。そんな彼らの言葉には、責任の重さに一人で耐えている気配が感じ取れるんですね。そのあたりを察するのがインタビューの醍醐味なのだけど、僕が思うに彼らは、然るべき立場に就いてこそ本来の力を発揮できるタイプなのでしょう。
見方を変えれば、組織が彼らを必要としている。その意味や価値を痛感しているからこそ、見栄や世間体に関係なく、重責をまっとうしようと努めている。それこそが、本来の役職ないしは階級の正しい在り様なのかもしれません。って、組織から離れて長い人間が言っても説得力や真実味は薄いだろうけれど。
いずれにしても、本人から聞いた段階では「へぇ」くらいにしか思わなかった『お知らせ』を正式書面で伝えられて、彼が選ばれたことを改めてうれしく思いました。今度会ったら専務って呼んでみようかな。
ブラシノキと同じ軒先から、今度はびわの実。なんと豊かなお庭でしょう。