”まだ”だらけの初心者に

知り合いの子供が自動車教習所に通い始めたそうです。そこで免許もクルマも持っていない親はこんな懇願をしました。「免許を取れたら、誰かウチの子の運転に付き添ってくれないか?」
それを耳にした瞬間、僕の頭の中ではいくつものプランが浮かびました。まず教えたいのは、決して人を傷つけない心得です。いわば安全運転ということになりますが、安全と言ってもかなり曖昧なので、とにかく人身事故を防ぐ。そのためにもっとも大事なのは、徹底的に引くことです。
交通事故が多発するのは交差点です。なぜ事故が起きるかというと、人であれクルマであれ、衝突する両者または片方が前に出るからに他なりません。理由は様々です。自分の側に優先権があったとか、ただの不注意だったとか。けれどひとまず前に出なければ、つまり自分が引けばぶつかることはない。そのせいで「何やってんだノロマ」と罵られようと、誰かが痛むことは避けられる。これが本当に肝要だと断言できるのは、僕自身が免許取得40年余りで一度も人身事故を起こしていない事実で証明できると思います。
交差点に関してより怖いのは、信号がない住宅地等の小さな四つ角です。たいがいは家の壁などがブラインドとなり、交差する道路から何が飛び出してくるか見えません。なので、仮に自分の道路に一時停止の標識がなくとも、停止に近い状態まで速度を落とすべきです。それと同時に必ずカーブミラーをチェックする。カーブミラーが設置されているということは、その交差点で事故があった過去を示していると考えたほうがいい。
それらを無視して減速もなく通過するドライバーは多いのだけど、彼らはまだ怖い思いをしたことがないんだなあと、その幸運に感謝すべきと思ったりします。
車庫入れとか、同乗者を揺さぶらないブレーキのかけ方とか、技術的な面も話したいけれど、それは追々慣れていけばいい話ですね。何より誰も傷つけず無事に帰宅する。これは心得の問題なので、初めての運転でも達成できます。
いずれにせよ初心者は、“まだ”だらけなんですよね。たくさんの“まだ”を乗り越えてきた経験者は、たった一度の“まだ”によって危険な目に遭わせたくないから、あれこれ教えたがります。それがウザくならないように伝えるにはどうしたらいいか。僕は今、それについて考えています。“まだ”知り合いの子供が免許を取れたわけでも、“まだ”僕に正式の依頼がされたわけでもないのに。

これも実家付近。思いのほか花が多くて心温まります。手入れをされてくれる方に感謝です。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA