急き勝ち

せっかちに当てる漢字は、急き勝ち。急いて落ち着きのない気持ちが勝ることを表しています。それが訛って、せっかちになったそうな。思いついたことをすぐに実行したくなる行動派や、あるいは完璧主義者を指す場合もあるようですが、僕の中のせっかちは、いち早く完成形にたどり着きたい思いが高まったときに暴れ出します。
よく覚えているのは、小学校高学年あたりで手を出し始めた、タミヤ1/12ビッグスケールシリーズ。実車を1/12のサイズで再現するプラモデルです。数千円しまして、お年玉をもらったときしか買えなかったのですが、高価な分だけ緻密で製作がタフで、そういう高級さに乗り物と工作が好きな少年は憧れたのでした。
まったくもって繊細でした。特にサスペンション周辺の部品は小枝のように細くて、他の部品にじりじりしながらはめ込んでいかなきゃならない。それこそが精巧なプラモデルづくりの醍醐味なのだけど、すぐに完成させたい気持ちが緊張感に耐え切れず、あるときボディを持っていた手を「うわぁ」と振り上げてしまったのでした。
それが、当時は団地の4階に住んでいた部屋の窓を見事にすり抜けたんですね。僕は背中越しだったのでその瞬間を見ていませんでしたが、となりに座っていた弟が突然の出来事に対して、「だから兄貴は!」と叫んだのをよく覚えています。物には然るべき手順と時間が必要なことは、後々プラモデルによって教わっていきます。
にもかかわらず、今でも時々完成を急くことがあります。原稿を書く段の話ですが、昔なら鉛筆を持って原稿用紙に向かう前、今ならPCのキーボードに手を添える前に、書くべき事柄をしっかり考えておくのが正しい筋道です。つまり、急がば回れ。その上で、思っていたのと違う流れになるならそれもよし。それがたぶん今のベストに違いないから。
そういう流れに早く乗りたいがために、頭の中で文章を構築する前に手を動かしても、ろくなものにはなりません。そうして無為な時間を費やしたケースがつい先日もありました。これもせっかちと呼ぶのだろうか。だとしたら生来だろうな
1月の終わり、これといった理由もなく自分に向き合う件についてここで触れて以来、何かと自分に向き合うようになってみたら、嫌な思いしかしなくなりました。自信をなくしそうなので、しばらく自分を放っておくことにします。

読みやすい綺麗な字だなあとも思って。

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