ダメなものはダメ

前に書いた記憶がありますが、生まれつきのウィークポイントは、歳を重ねるほどに深刻さが増していき、ものによっては日常生活に支障を来すことを実感します。他の人はどうなんだろう。僕の場合、決定的なのは高所恐怖症です。子供の頃から高いところが苦手でした。
よく覚えているのは、板張りの隙間から下がのぞける跨線橋です。そこを渡るのを怖がる息子をからかう父親が憎たらしくて、けれどどうしようもなく足がすくんで、幼いながらに情けない気持ちに苛まれました。
そんな過去がありつつも、見栄を張らずにいられない20代まで成長すると、怖いものがあるとは人に打ち明けにくくなります。だから若さに任せて何とか頑張ってみた。でも、克服できたわけじゃなかった。
40代になると、自分の弱点をさらけ出せるのも大人だと思い込めるようになります。ただ、いかに認めようとダメなものはダメで、50代以降は冒頭で触れたように、高所に対していよいよ確実で圧倒的な恐怖と拒否反応から逃れられなくなりました。
たとえば東京湾を跨ぐアクアライン。特に木更津側から川崎側に向かう際の、橋梁部分の頂点を目指す運転は恐ろしい。たいがいは一人なので、ハンドルを握りながら恐怖を吹き飛ばせると信じて大声を出していますが、その居たたまれない不安感は体に染みついてしまいました。なので可能なら地続きのルートに迂回したいと思うわけです。たとえ東京湾を巡る高速道路のほうが1時間ほど余計にかかっても。先日も、その判断で半日悩みました。
自分でも笑ってしまいます。でも、くどいようですがダメなものはどんどんダメになっていくのです。こればかりは仕方ない。
今もっとも他人事に思えないのは、大西洋で行方不明になっているという潜水艇です。あれは高所ではなく海底ですが、僕はたぶん狭いところも苦手なので、今の自分なら仕事の依頼でもそもそも乗る勇気が持てないでしょう。だからこそ、この時点でも艇の中にいる人々の様子を想像した途端に息苦しくなります。状況的には奇跡と呼ばれるかもしれませんが、無事の帰還を願うばかりです。

ランニングコースを巡るお宅の庭先で、サボテンは意外にないなあと思っただけです。

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