置き去りの夢オチ

場所は泥まみれの、いわゆるオフロード。四輪駆動たる我が愛しのオンボロの性能を発揮するにはうってつけのフィールドですが、おおむね平坦で、僕としてはもっと凹凸が激しいほうが楽しいのになあと、いささか物足りなさを感じています。
助手席には女性。僕は彼女に、不安定な路面の走り方をレクチャーしています。急ハンドルを切った唐突さを詫びたりしながら。
スッと場面が変わると、僕と彼女はクルマの脇に立っていました。彼女は20代半ばくらいで、どうやらタレントを生業としているらしいのです。どこかで見た覚えのある顔だけど、見た覚えのある髪型や輪郭や目や鼻筋を唇を寄せ集めた、総体的な偶像なのかもしれない。
さておき、奇妙に視線の合わない笑みを浮かべている彼女に向かって、僕は提案をします。「このクルマ、運転してみる?」と。なおかつ、「職業的に何かの足しになるかもしれないから」などと大人っぽいお節介まで添えて。すると彼女は嬉々とした表情になり、すぐさまクルマのドアを開けました。
今思えば、自分も助手席に乗るべきでした。しかし彼女がエンジンをかけたとき、僕はなぜか少し離れたところにいたのです。広い場所だから大丈夫だろうと高を括ったのでしょう。マニュアル車に不慣れな者にありがちな、車体がガクガク震えるような発進を眺めても、まぁそんなもんだよねと余裕をかましていました。
ところが、走り出した途端にクルマが半回転! 屋根を地面につけたまま視界の奥へと猛スピードで遠ざかっていくのです。思いのほかスムーズに天井を滑らせながら、やがて崖の下へ。はるか彼方へ落下したかと思いきや、そこはフィールドの脇に沿った下り坂の途中。
最悪の事態ではないことを確認しながら駆け寄ると、仰向けになった我がオンボロから火の手が上がり、周囲の草むらに燃え移る気配を感じました。そこで僕は「消火器!」と叫ぶのです。それに呼応するように、背後から「extinguisher!」という声が聞こえてきました。なぜ英語? ここはどこ?
そんな疑問が浮かんだ瞬間に覚醒。すみません、夢オチです。それにしても、こうして詳細に思い出せるほどリアルな展開でした。最大の疑問は、この夢は僕にどんな警告を与えようとしたのかです。大人ぶった驕り? 若い女性に対する甘さ? 何も示されないまま一人だけ現に戻されて、むしろ置き去りにされた気分になりました。
今もっとも気掛かりなのは、あの彼女の無事です。あの彼女って、誰?

誰もいない昼過ぎの公園。こんな光景が夢のネタになるのかな?

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