還暦と、その記念と2023年の立春(1)

昨日は二十四節気の霜降について書きました。1年を24分割する古い暦に触れるのは「2023年の気分だから」としましたが、実は二十四節気の始まりの立春に大きな出来事があったからです。
今年の立春は2月4日。その日にここで何を記していたか確認したら、「なかなかに縁起の良い日になりそうだ」と締めていました。書いたのは前日の晩。なので今思えば、その時点で当日に何が起こるか予想できなかった呑気さに呆れる他ありません。
ギターを弾き始めた15歳の頃から今も憧れ続けている、アメリカンギターブランドのマーティン。その新たな1本に出会ってしまったのが立春でした。場所は、一般客向け販促イベント会場。僕は仕事の一環で出向いたのに、いわば関係者が手を出してしまうという禁忌に触れてしまいました。でも、止めようがない。常識も通念もすり抜けて落ちるのが恋だから。
そのギターに一目惚れするまでには、こんな経緯がありました。
誰しも順調に歳を重ねれば、いつしか迎えざるを得ない還暦。けれどその直前、年寄りになる不安のあまり、僕はグズグズモワモワしていました。そんな気分を吹き飛ばす提案をしてくれたのは、楽器店の友人でした。
「マーティンのアメリカ本社に行って、カスタムモデルをオーダーしましょうよ。還暦の記念に」
まったくもって考えつかなかったアイデアです。これまでに自ら年齢的な節目を祝う気持ちも習慣も持ったことがなかったし、40歳で初めて買ったマーティンに続く2本目に手を伸ばすのも想定外だった。それにカスタムモデルはいわゆる別注品なので、最初のマーティンを凌駕する高価格になるのも知っていた。だから演奏の技量的にも、自分に縁があるとは思わなかったのです。
ただ、友人が口にした「記念」という単語に心が揺さぶられました。それは大きな発見だったのです。そういうものが自分の人生にあってもいいという。
アメリカ本社には、最初のマーティンを購入してから1年後に取材で訪れました。それから20年を経て再訪するという物語も含めて記念にしていいのかもしれないし、何より、還暦になるのも悪くないと思えたのが大きな救いになりました。
しかし、コロナですべてが水泡に。やはり分不相応な期待だったのかもしれません。そうして58歳や59歳のときと変わらないまま60歳の誕生日を迎え、このまま還暦をスルーするのだろうと思ったわけです。ところが、しかし……。
この話、まだしたいので明日も続きます。

こんなにキレイな顔をした子なんです。僕の2本目。

 

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