誠意ある人との仕事

訪日外国人のインタビュー取材がありました。その通訳を担当してくれた若い女性の仕事ぶりが素晴らしかったので、たぶん届かないと思うけれど、ここで感謝の言葉を綴らせていただきます。
そんなわけで年に何度か、通訳さんが入る取材があります。外国語が使えない僕が想像するに、通訳で特に厄介なのは、とにかくその場で瞬時に会話を成立させなければならない点でしょう。スピード命なので、多少の意訳があってもオッケー。ただ、発言の真意を変えない程度の言葉選びや言い回しを用意するセンスが不可欠になるはずです。
そしてまた、責任の重い仕事です。なぜなら、通訳次第で会話の流れが変わってしまうから。なにしろ向き合う相手の言語が理解できないので、それぞれが何を言っているかは完全に通訳任せ。社運を賭けた交渉の場などでは、一字一句が双方の損得に関わってしまうでしょう。
僕のインタビューではそこまで辛辣なシチュエーションになることはまずないけれど、それでも相手の考えをあえて問い質し、さらなる真意を引き出そうとする場面はあります。そういう失礼に当たりそうな質問もそのまま口にしなければなりません。というか、口にしてほしいわけです、聞き手の僕としては。
以上は、つまるところインタビュアが通訳に求める条件そのものです。無理難題ですよね。ですから聞き手側も、通訳が入る場合の質問のつくり方を考えなければなりません。紋切型になろうともセンテンスは短く。日本語の会話にありがちな語尾の濁しはNG。ニュアンスを汲み取ってほしいという甘えも禁物。通訳を介すと通常の取材より倍の時間を要してしまうので、多少乱暴そうに聞こえようとも的確さを重視。
ゆえに海外の方とのインタビューは、聞き手と聞かれ手、そして通訳の連携プレーによって成立します。それが昨日はとても上手くいった実感を覚えました。後に聞いたら、今回の通訳さんは本職ではないそうです。なのに機転の利かせ方は、言葉がわからずともはっきりわかりました。それが単純なセンスの良さだけではないことは、事前に渡した質問表をちらっと眺めただけでも判明したのです。僕がつくった日本語の質問の下に、彼の地の言葉がびっしりと書き並べてあったんですね。その丁寧な準備だけでも間違いないと思いました。
本日声を大にして言いたいのは、誠意ある人との仕事は気持ちいいということ。インタビューが終わった直後の彼女の、力が抜けたような笑顔があまりに素敵だったので、誠意を込めてハグしたかったくらいです。

路面電車が走る街には、不思議とゆとりを感じます。

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