「かばう」にあてる漢字は「庇う」。その「庇」は一文字で「ひさし」と読みます。それだけで「かばう」の動詞的意味合いが手に取るようにわかります。
「庇う」の部首に使われている「?」は「まだれ」。これは家屋を意味するそうです。その中に入るヒは人を表しているらしく、ヒが二つで比となっている状況を勝手に推測すると、「?」の下に収まれるのはせいぜい2人。それくらい狭い範囲で雨や雪に降られるのを防げる家屋の一部ということで、小さく出っ張った屋根を「ひさし」と呼び、その効果の比喩が「庇う」なのでしょう。まったくもって筋が通った流れです。
「庇」に関して方々検索していたら、工務店あたりのサイトに当たりました。家屋はどの部分も相応に劣化していくけれど、壁から出っ張る形の「庇」は雨風をもろに受けるので、ひび割れを起こしやすいんだそうです
他方、「他から害を受けないよう助け守る」が「庇う」の一般的解釈です。それがもっともはまるのは親と子の関係性でしょう。親は我が子を絶対的な庇護の対象とします。その絶対は無償と同義なので、子供の側も幼いうちは庇われることに疑問など持ちません。ただしある程度育つと、親の気も知らずに庇護がうっとうしくなる。そこからさらに成長していけば、いよいよ親のありがたみを実感し、自分が親になれば我が子をあらゆる害から守ろうとする。これもまた、庇護の循環として筋が通っています。
家屋のそれも、または親にとっても、誰かの「庇」となって「庇う」というのは、身体だけでなく心も痛みを伴うものなのでしょう。であればこそ、しっかり成長したなら他者の「庇」を期待してはならないと思うのです。あるいは「庇う」側も、それが本当に他者を守ることなのか正しく見極めなければならないのかもしれません。
けれど人情ってのは、無理してでも「庇」を差し出そうとしちゃうんですよね。出さなければ裏切られることもないのに。いやもう、切なすぎる事件に胸のざわつきが止まりません。

ついこの間までお花屋さんだった。

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